台湾の廟に入ると、床に赤い三日月の木片を投げている人を見かけませんか?
私も台湾に住み始めたころ、あれが不思議で仕方ありませんでした。
真剣な顔で投げては拾い、また投げる。何かの儀式なのか、それとも遊び感覚なのか。
気になるけれど、周りの人は真剣そのもの。
とても「それ何ですか?」と聞ける空気ではありません。
あれは「筊杯(ジャオベイ)」という道具で、「ポエ占い」で耳にしたことがあるかもしれません。
神様に質問をするための、いわば台湾式の通信手段です。そして台湾のおみくじは、この筊杯を使わないと引くことすらできません。

日本のおみくじは、お金を入れて引けば終わり。
でも台湾のおみくじは、神様に許可をもらうところから始まります。この違いを知っているかどうかで、廟での過ごし方はまったく変わってきます。
今回は、台湾の廟で使える筊杯の使い方と、おみくじの引き方をご紹介します。
龍山寺だけでなく、台湾中どこの廟でも通用する基本の作法です。
台湾のおみくじは「引く」前に神様の許可が要る
まず知っておいてほしいのが、日本と台湾のおみくじの決定的な違いです。
日本のおみくじは、その日の運勢を「授かる」もの。引いた結果を受け取って終わりますよね。
一方、台湾のおみくじは神様との対話です。
「今こんなことで悩んでいます。おみくじを引いてもいいですか?」と伺いを立て、許可が出たら引く。引いたあとも「このお告げで合っていますか?」と再確認する。
まるで目上の方に相談しているような、丁寧なやりとりが続きます。
その対話に使う道具が筊杯なんです。だから、筊杯の使い方を知らないと台湾のおみくじは始まりません。
そしてもうひとつ大事なのが、これは観光アトラクションではなく、地元の人にとっては真剣な相談の場だということ。

就職、結婚、健康、家族のこと。人生を左右する問いを抱えて廟に来ている人が、すぐ隣にいます。ここは押さえておきたいポイントです。
筊杯(ジャオベイ)とは?3つの結果の意味
筊杯は、赤く塗られた三日月型の木片が2つで1組になった道具です。廟の中の、神様の像の近くに置かれていて、誰でも自由に使えます。
木片には表と裏があります。
- 平らな面…「陽」
- ふくらんでいる面…「陰」
この2つを両手で持って床に落とし、出た組み合わせで神様の返事を読み取ります。
返事は3種類です。

覚え方はシンプルで、「バラバラならOK、揃ったらもう一度」です。
面白いのが真ん中の笑杯。
神様が「そんなこと聞かれても、ねえ」と笑っている状態だと言われています。怒られているわけではなく、質問の仕方を変えてみてね、というサインです。
尊敬する先輩に聞いているみたいな、台湾の神様の距離の近さを感じます。
ちなみに、落とした木片が倒れずに立ってしまう「立筊」という非常に珍しい結果もあります。滅多に起きないので、もし遭遇したらラッキーだと思って、もう一度投げ直せば大丈夫です。
おみくじの引き方7ステップ

それでは実際の流れを見ていきましょう。廟によって細かい違いはありますが、基本はこの流れです。
台湾人の友達にも言われましたが、神様が迷わないように住所など細かく伝えるのが作法らしい!
- まず廟内の神様に順番にお参りをする。いきなり筊杯から始めず、ひと通りご挨拶を済ませます
- 主神の前に戻り、筊杯を両手で持って香炉の上で時計回りに3回まわす
- 心の中で自分の名前・生年月日・住所を伝える。住所は番地まで、生年月日は西暦か旧暦かも添えると丁寧です
- 悩みごとを具体的に伝え、「おみくじを引いてもいいですか」と尋ねてから筊杯を落とす
- 聖杯(バラバラ)が出たらOK。おみくじ棒が入った筒から1本引く
- 棒に書かれた番号を確認し、もう一度筊杯を投げて「この番号で合っていますか」と確認する
- 聖杯が出たら、その番号の引き出しからおみくじを取り出す
もし笑杯や陰杯が出たら、質問を変えるか、日を改めます。
地元では3回まで試すのが一般的です。番号確認で許可が出なければ、おみくじ棒を引き直します。
「そんなに何度も投げるの?」と思うかもしれませんが、この往復こそが台湾の参拝の醍醐味。神様とキャッチボールをしている感覚になります。
観光客がやりがちな2つの失敗
ここからは、私が実際に見てきた「もったいない失敗」を2つ。
失敗1:質問がふわっとしすぎている
一番多いのがこれです。「幸せになれますか」「今年の運勢はどうですか」といった漠然とした問いは、笑杯が出やすくなります。
神様も答えようがないんですよね。「幸せって、あなたにとって何ですか?」となってしまう。日本のおみくじの感覚で「今年の運勢を占ってください」と臨むと、いつまでも聖杯が出ない、という事態になりがちです。
失敗2:力いっぱい投げてしまう
筊杯は「投げる」というより「落とす」が正解です。
力を込めて放ると、跳ね返って転がって、そもそも結果が読み取れません。周りの人にぶつかる危険もあります。胸の高さくらいから、そっと床に落とします。
台湾の人たちは、しゃがんで丁寧に落としている方が多いので、周りを真似すれば間違いありません。
神様に伝わる「質問のコツ」
そんな細かく聞くなんて、難しい!って思いますよね。
質問のコツは、イエスかノーで答えられる形まで絞り込むことです。
避けたい聞き方と、おすすめの聞き方を並べてみます。
| ふわっとした質問 | 具体的にした質問 |
|---|---|
| いい人に出会えますか | 今年中に、結婚を考えられる人と出会えますか |
| 仕事はうまくいきますか | 今の会社で、来年も続けたほうがいいですか |
| 健康になれますか | 気になっている症状について、病院で検査を受けるべきですか |
ポイントは、期間を区切ること、そして自分がどうしたいかを含めること。
「AかBか、どちらがいいですか」という二択も、神様は答えづらいので避けたほうが無難です。まず「Aにしてもいいですか」と聞いてみましょう。
人に聞いてもらったり、自問自答していくことで脳内がスッキリするみたいに、
質問を絞り込む過程で、自分が本当は何に迷っているのかがはっきりしてきますよね。
これが筊杯の一番の効用かもしれません。
どこの廟でできる?初心者におすすめの廟
筊杯は台湾中の廟にあり、基本的にどこでも同じ作法で使えます。旅行者が行きやすいのは、このあたりです。
龍山寺(台北・萬華) 台北最古の寺で、100以上の神様がまつられているオールマイティーな廟。日本語対応のスタッフさんがいる時間帯もあり、おみくじの内容を解説してもらえることもあります。初めてならここが安心です。

霞海城隍廟(台北・迪化街) 縁結びの月下老人で有名な廟。迪化街の街歩きとセットで訪れられます。恋愛の相談で訪れる人が多く、独特の熱気があります。
慈祐宮(台北・松山) 饒河街観光夜市の入口にある廟。夜市に行くついでに立ち寄れる立地で、観光客も比較的少なめです。
どの廟でも、現在は環境保護の観点から火を焚いたり、台湾特有の長い線香を持って回ることは無くなったので、煙たさが無く回りやすくなったのもポイント。
参拝の順序に地域差はありますが、筊杯の作法はほぼ共通。
慣れてきたら、旅先で見つけた小さな廟に入ってみるのも楽しいですよ。
まとめ|筊杯は台湾の文化に触れるいちばん近い入口
台湾の廟の赤い三日月、筊杯についてご紹介しました。
- 筊杯は神様に質問するための道具。おみくじは許可をもらってから引く
- 聖杯(バラバラ)ならOK、笑杯(平ら2つ)は質問を変えて、陰杯(ふくらみ2つ)は今回は見送り
- 名前・生年月日・住所を伝えてから、具体的な質問を
- 投げるのではなく、そっと落とす
- 台湾中の廟で同じ作法が使える
言葉が通じなくても、作法さえ知っていれば、台湾の人たちが大切にしている文化の中に一歩踏み込むことができます。観光地を眺めるだけでは味わえない、忘れられない体験になるはずです。
次の台湾旅行では、ぜひ廟に足を運んで、神様と話してみてくださいね。旅先で読み返せるよう、この記事を保存しておくと安心です。
メニュー翻訳には、通信環境も大事
ローカル店でどうしてもわからない料理名は、スマホのカメラ翻訳が頼りになります。そのためにも、台湾では通信環境を整えておくのがおすすめ。
